研究最前線 〉 山澤 弘実 教授

研究最前線

地球環境の変化を診断・予測する

地球温暖化や粒子状物質の放出など、エネルギー利用に伴い、地球環境は変化している。その診断と予測のため、新たな測定装置の開発や大規模シミュレーションに取り組んでいる。

教授 山澤 弘実

エネルギーの供給・使用に伴う地球環境の変化を、我々は現在どの程度理解し、どれだけの確信を持って将来を予測できるのであろうか? 産業革命以後の人間の活動が地球全体の環境を変えつつあることは明らかで、その詳細を理解して産業活動に反映するためには、人為的に環境中に放出された汚染物質や地球温暖化物質の動態把握が必要である。これらの大気中物質は最初は大気乱流により小さな空間で広がり、徐々に地球全体の大きなスケールでの輸送に取り込まれ、その間に複雑な物理的・化学的な変質・除去過程を経る。我々が環境中で測定する物質の濃度は、これらの種々の過程を経た結果であり、その変動の解釈や将来予測は極めて高度でチャレンジングな「応用問題」である。この問題には世界中の多くの研究者がいろいろなアイディアを持って取り組んでいるが、未だに多くの課題が残されている。 我々は、大気中の極微量の天然放射性物質を測定する技術を開発・応用し、大気中の物質輸送や、大気と海洋・地表面との間の物質交換を評価する研究に取り組んでいる世界的にもユニークな研究グループである。放射性物質を対象にすることで、その半減期や物理・化学的性質によって、大気中現象の特定の過程のみを追うことができる。グループのメンバーは各自の得意分野を生かして、測定器の開発、国内外での野外観測、大気輸送シミュレーションモデルの開発等の色々な側面に関わる。これらの研究で得られる専門知識や成果は地球環境問題のみならず、原子力施設等の安全評価にも適用できる。

図 地球規模の環境測定と大規模シミュレーション