研究最前線 〉 藤田 隆明 教授

研究最前線

核融合エネルギーの実用化を目指す

太陽のエネルギー源でもある核融合は、クリーンで燃料の豊富な未来エネルギーだ。これを地上に実現すべく、実験と数値シミュレーションを駆使して、研究に取り組んでいる。

教授 藤田 隆明

太陽のエネルギー源である核融合を地上で実現できれば、二酸化炭素を放出せず、燃料が豊富で、安全性が高く、大規模・安定に稼働できるプラントとなるため、核融合は未来のエネルギーとして期待されています。日本は世界の核融合研究をリードしている国の一つで、国際プロジェクトITER(国際熱核融合実験炉)計画(図a)にも加わっています。 核融合エネルギーの実用化のためには、磁場の力で1億度以上の超高温の炉心プラズマを安定にかつ効率的に閉じ込めなければなりません。私たちは、プラズマ実験、実験データ解析、計算機シミュレーションなどの複合的なアプローチで、炉心プラズマの研究を進めています。 研究室所有の小型装置を用いてプラズマ実験を行っています。特に、TOKASTAR-2(図b)は多様な磁場コイル系(図c)を有し、現在の主流となっているトカマク型配位、ヘリカル型配位、さらにはそれらの混成配位が可能なユニークな装置です。 大型トカマクJT-60(図d)で十数年間実験に携わった経験に基づき、プラズマ中に発現する電気絶縁体(電流ホール)(図e)など興味深い現象についてJT-60実験データの解析を進めています。 炉心プラズマの計算機シミュレーションは、ITERなどの将来の装置のプラズマ性能予測や運転制御手法の事前検討のため、近年ますます重要度を増しています。私たちは独自のTOTALコードを用いてプラズマ中の熱・燃料粒子・不純物粒子の径方向輸送などを解析しています(図f)。特に、JT-60等の実験データとの比較により計算モデルを検証・改良し、予測精度を向上することに力を入れています。 核融合の研究は、人類に大きく貢献できる可能性や革新的な発見・工夫の可能性があり、研究者としてとてもやりがいのあるテーマです。

図a 国際熱核融合実験炉ITERの鳥瞰図
図b TOKASTAR-2装置の写真
図c TOKASTAR-2装置のコイル系
図d 日本原子力研究開発機構那珂核融合研究所の大型トカマクJT-60
図e 電流ホールプラズマの断面におけるプラズマ電流分布
図f TOTALコードによる計算結果。核融合炉の炉心プラズマへ不純物が混入したときの応答。