研究最前線 〉 辻 義之 教授

研究最前線

エネルギーシステムの安全性と経済性を追求する

熱や流体の知識は、現状では必ずしも有効かつ効果的に利用されていない。熱を伴う流体運動の制御と予測を新たな知見から実行し、エネルギーシステムのさらなる発展を目指している。

教授 辻 義之

私たちの身近にある水や空気の流れを計測することは、工学的に多くの観点から必要とされてきました。その究極的な方法は、流体を乱すことなく、速度(これはベクトルですね)を計測することです。この最新技術を、私たちは特殊なYAGレーザと高速度カメラを利用して開発しています。その結果、複雑な流動を手に取るようにわかるようになりつつあります。図1は円管の中の流れを計測したものです。中心部では早い流れが作られ、上下の壁では渦が形成されていることがよくわかります。 複雑な流動を知るためには、コンピュータを使った方法も不可欠です。日本が誇る最高速のスーパーコンピュータをつかって計算をしています。図2は小さな山を通り過ぎる流れの温度の変化です。壁面を一様に加熱して、流れによって熱が奪い去られる際にはマッシュルームのような渦が繰り返し作られていることがわかります。この図を見てもわかりますが、流体は不思議な運動をしますね。 熱や流体の知識は、エネルギー関連システムの安全性と経済性を向上する上で不可欠です。化石燃料を利用する火力発電や水力発電、原子力発電所などの従来からの発電システムはもとより、新エネルギーとして注目される風力発電や燃料電池においても、熱流体力学の基礎的知識が担う 役割は計り知れません。しかし、現状では必ずしも基礎的な知識が有効かつ効果的に利用されてはおらず、多くのエネルギーを無駄にしています。このような観点から、熱を伴なう流体運動の制御と予測を新たな知見から実行し(図3)、エネルギー科学における安全性と経済性を向上させる研究を充実させています。

図1 円管の中を流れる速度の変動をベクトルで表示。流れは右柄左へ。
図2 一様に加熱された壁面から熱が奪われる様子。
図3 ダブルパルスYAGレーザーとCCDカメラを用いた非接触計測法